鋼の心臓 歯車の手足 硝子の瞳
腐った脳味噌は変色し、
やがて朽ちて消えるだろう。
硝子の瞳は濁りだし、
やがて何も映らない。
そんな腐った脳味噌で、
頭の芯がぼうっとし、
逆にはっきりとしているようで
霞がかっているようで
雨が降っているようで。
雨というより雪だろう。
けれど雪ほど冷たくは無く、

ああきっと、
真っ赤な、真っ赤な、
血の雪だろう。
だから、こんなに暖かい。
だから、こんなに苦しい。
私は生きて、死んでいる。
鋼の心臓 歯車の手足 硝子の瞳
細胞はやがて変色し、
いずれ朽ちて落ちるだろう。
歯車の手足は停止して、
鋼の心臓は錆びていく。


そんな腐ったこの体
力を込めても動かない、
せめて月を手にしたい。

押さえられているようで
抱きしめられているようで
違うこれは絶望だろう。
けれど絶望は冷たく無く、
ああきっと、
青い、青い、
夜なのだろう。

だから、こんなに暖かい。
だから、こんなに懐かしい。

人間だけど、私は機械。
20072/20