踏み固められた土の道を子猫たちと別れて少し進めば、大人猫たちの奇異の眼差しが向けられた。


「ネロ、その方は誰だい?」
「ウェイザー・レオさん!旅猫さんなんだって!」


 大人猫の一匹が進み出て優しく聞けば、
 ネロは先ほどと同じように、嬉々として答えたのだった。
 それにレオは苦笑を浮かべ、
 帽子をとり、
 胸に当ててペコリとお辞儀をひとつした。


「始めまして懐かしき匂いに包まれし村の皆さん。私はウェィザー・レオと申します。」


 礼儀を示せば、大人猫たちの間に漂っていた警戒心は解け、暖かい眼差しを向けられた。


「初めまして放浪の語り手。ヴァーインへようこそ。」


 ネロに話しかけた大人猫がそういい、2匹は握手を交わす。


「ありがとうございます。」


 柔和に微笑んで、
 尋ねた。


「ところで、この村に3日ほど停泊したいのですが、
 一時の休息を求める風がこの穏やかなる時の流れに留まることを許されるには、誰にそれを願えばよろしいのでしょうか。」


 奇妙な言い回しも詩人ゆえかと微笑んで、
 大人猫はそれを違和感なく発しえるレオの柔らかく澄んだ声に答えた。


「村長様へ。それがこの村の掟です。」
「村長様はどちらに、」
「今の時間なら自宅におられるはずです。場所は」
「僕知ってるよ!」


 会話に突然入り込んできた元気な声に、
 周りの大人猫たちは苦笑して、「お話の途中に邪魔してはいけないでしょう」と嗜(たしな)めた。


「だってぇ」
「だってじゃありません。」


 叱るその口元が苦笑している。
 それを見て、
 レオは、ネロを含む子猫たちがどれほどこの村で愛されているのかを垣間見たような気がして、微笑んだ。


「ネロ、村長様のお家を知っているのかい?」
「うん!」


 この村に住んでいるのだからそれは当たり前のことだとレオは知っていたが、
 顔を輝かせてうなずくネロにただただ微笑みしか出ない。


「それじゃあ、ネロ、よかったら君が、村長様のお家まで案内してくれないかい?」
「うんっ!」


 元気にうなずく子猫を見て、
 やはり誰もが微笑んだ。







 もう少し。
 もう少しで、
 彼に会える。

 その瞳の奥を静かに揺らめかせ、
 レオは微笑んだのだった。




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