「うぃ、うぃっか?」

 耳に馴染み無い単語に疑問符が飛ぶ。

「うぃっかってなんだ?」

 その疑問符を横手にいるエドガーへ投げたのは答えを期待してというよりもただ単にエドガーが隣にいたからというそれだけの理由だったのだが、尋ねられたエドガーは逡巡し、仁王立つ男の様子を窺いつつも口を開いた。

「ウィッカ、というのはウィッチの事デス。魔女が自らを魔女だと名乗るとき、ウィッカと言いマス」
「へー、エドガー物知りだなぁ。…………。ん? 魔女? 男なのに?」

 そこは魔法使いでは無いのだろうか。

「ウィッチという単語に本来性別を限定する意味は無い!」

 疑問に答えたのは相対する男だった。否、答えたなどという平素な表現はこの場合適切でないだろう。恫喝する、と言ったほうがその態度に相応しい。眉間の皺を深くし、口をへの字に曲げて憤懣やるかたないといった様子で言葉を続ける。

「確かに、伝統的に全体の割合として女のウィッチが多いのは事実だが、だからといって何故ウィッチといえば女と限定されなければならない? その上さらに、男の魔女はワーロックだの魔法使いだのと名乗り分ければ良いだなどと、愚劣極まりない発想だ。かの魔女裁判に並ぶおぞましい考えだ。いいか、ウィッチとはウィッチなのだ。我々ウィッカはそうと名乗る事そのものに、もっと誇りを持つべきだ。そもそもとしてウィッチとは自然界との――」

 以下、延々と講釈が続く。
 どうやら、魔女=女という図式は男の地雷だったらしい。突然始まった長台詞に朋幸もエドガーもしばし呆気にとられ――

 もしかして今が逃げるチャンスじゃないかと気がついた。

 そっと目配せし合い、ゆっくりと数メートル先にある出入り口へと横歩き。建物に囲まれた僅かなスペースに作られたこの公園は、男が背にする歩道側以外はぐるりと壁やフェンスに囲まれているが故の選択だ。他に最短距離で男の横をすり抜け植え込みを突っ切って真っ直ぐ歩道へ出るという選択肢も無くは無いが、男の魔法発動速度を鑑みるにそれは自殺行為だろう。

 男の講釈はまだ続いている。いつの間にか、内容は『そもそも魔女とは何をもってして魔女と定義されるのか』などという明々後日の方向へと大幅に逸れていた。逃げる朋幸らに気づく様子がまるで無い。他人の話を聞かない上に周囲の様子も見えていないらしい。そのまま至極あっさりと、拍子抜けするくらいにすんなりと、二人は公園の出入り口にまでたどり着いた。辿り着いて――

 ぶつかった。
 がつんと眼前で星が散る。予想外の衝撃に、朋幸は蹈鞴を踏んだ。

「な、なんだ……?」

 強かに打った額をさすりつつ中空を見るが視認できるような障害物は何もない。まるで何か、見えない壁にでも立ちはだかられたようだったが……。

「どうやら、俺の話を聞いていなかったようだな」

 声は後方から。
 ぎょっとして振り返れば先ほどと変わらぬ位置から男が二人の方を向いていた。仁王立ちで腕を組んだ、出会い頭のポーズである。

「場を固定したと言っただろう。まさか、ここから出られるとでも思ったのか?」
「だから、お前の言ってる事全部わけわかんねぇんだよ! なんだよ場を固定って!」
「……先程から、貴様は随分と初歩的なことばかりを訊いてくるな。一般人を装ったところで俺の目は誤魔化せんぞ」
「いやだから何の話だよ」
「次元をずらして衆目につかぬよう努める事も、魔法を使用する際に場を固定し無闇に世界へ干渉しないよう努める事も、魔女が魔女術を行う際における当然の配慮、否、義務だろう。まさか教会との協定を知らぬとは言うまい」
「いや、知らねぇよ」
「……成る程、教会との協定を知ったことかと唾棄するか。傲岸不遜とは貴様らの事だな。事は貴様ら個人だけでなく、魔女協会全体の威信に、否……場合によっては魔女裁判の再来すら危ぶまれるというのに、己が欲望の為ならば他は顧みないと言うわけか」
「はぁ……?」
「愚か者どもめ」

 罵られた。汚物でも見るような侮蔑を込めた眼差しまで向けられる。何故そうなるのか。というかどうなっているのか、そもそも男が何を言っているのだか、朋幸には何一つわからない。というか先程から質問に答えられる度に意味不明さが増しているような気がするのは気のせいだろうか。

「……どう考えても気のせいじゃねぇよな……」
「ほう? 気づいていたか」

 何にだ。
 どうやらこの男の前では迂闊に独り言も喋れないらしい。

「悟られないよう工夫を凝らしたつもりだったが、ふむ、どうやら俺もまだ至らぬようだ。精進せねばな」
「いや、だから何の話してんだよ……」
「次の一手で貴様らを確実に殺すという話をしているのだろう」

 あっさりと死刑宣告をしつつ男は組んでいた腕を解き――杖先を二人へ、向けた。エドガーが隣で息を飲んだ音を拾いつつ、朋幸は違和感に眉根を顰める。

 宝石が、
 先端に埋め込まれた宝石が、黒い。

 夜の闇よりも足元に落ちる影よりもなお黒い。陽の光さえも反射せず飲み込んで、ただひたすらに、黒い。先ほど見たときは、確かに男の瞳を写したような青色をしていたのに。

「トモユキ」

 袖を引かれ名を呼ばれる。見ればエドガーが蒼白な顔を左右に降った。

「あれは、いけません。さがって」
「あぁ」

 よくわからない。男が何者なのかも、不可思議な力のことも、あの杖のことも。
 けれど、なんだかヤバいらしい事だけはエドガーに言われるまでもなく分かっていた。
 あの黒い杖先を向けられてから、体が震えて止まらないのだ。恐ろしくて、恐ろしくて、意識よりも先に身体がもう竦んでしまっている。

「……あー……まいったな」

 よくわからないが、
 どうやらあれは本当に朋幸らを殺せる何からしい。
 黒が滲み出る。杖先が視認できなくなって、そのまま景色を飲み干していく。朋幸らを飲み干そうと見る見るうちに迫ってくる。逃げなければと思う反面、これはもうどうしようもないな、という諦めが朋幸の思考を染め上げていた。実際、黒色の侵食速度は今更逃れられるようなものではない。

 あぁ、と呟く。
 こんな訳の分からない状況で、意味不明な男に、理解不能な力で殺されるのだろうか。
 ストーカーなんかに殺されるのか。
 溜息が出た。

「――朋幸ぃ!!」

 声が、
 ぱちりと目を瞬く。

「……あきひろ?」

 黒が視界を埋め尽くす。瞼が開いているのか閉じているのかも最早判然としない。五感までもが急速に遠のいて……けれど、
 強く、誰かに抱きしめられた。
 高く、高く、硝子の割れる音が迸る。亀裂から光が差し込んで、ガラガラと、ぼろぼろと、視界を埋め尽くしていた黒がほつれて崩れて落ちてゆく。世界に景色が戻ってくる。
 男の驚嘆に染まった顔がまず見えて、それから、
 縋るように強く抱きしめる者に気がついた。

「……魔王?」
「朋幸、朋幸、朋幸!」

 震える声は泣いているかのようだ。きつく背に回された腕はこぼれ落ちていく何かを必死で繋ぎ止めようと藻掻いているようで。まるで手を離せばその瞬間に朋幸が淡雪の如く消え失せると信じているようで。

「魔王、痛いって。あとお前ちょっと冷たいよ。服まで冷たいってどういうことだよ」
「朋幸ぃ、ううう……」

 完全に涙声である。

「はいはい、よしよし。ったく、お前何泣いてんだよ、しょうがねぇなぁ」
「空間制御をこうも容易く破ってくれるとはな」

 声が吹雪く。冷たく、視線が突き刺さった。

「あの魔法も、破る者はそういないのだが。顕現して間がなくとも、魔王であるという事実に些かの遜色も無いということか」

 恬淡と、ただ事実を述べているだけのような口調で、けれど、語るその口元が微笑っている。凄惨に愉しげに微笑っている。脅威と対峙出来ることがこの上ない喜びであるとでも言うように、悪魔のような陰惨な顔で男は微笑う。

「危険因子は排除する。それが、何者であったとしても」
「ほぅ……?」

 スゥ……っと、空気の重みが増した気がした。
 朋幸から手を離し、ゆぅっくり、魔王は男を振り返る。その顔に表情は無い。

「魔王を滅ぼすという事の意味を、知って言っているんだろうな?」
「無論の事だ。しかしそんな些末事、俺にとってはどうでもいい。我々にとって危険ならば、神だろうと排除する。俺はそういうふうに出来ている」
「……」

 魔王は、どうやら絶句したようだった。朋幸はその背後でエドガーと無事を確認しあっていたのだが、話題があまりにもよく分からなかったのでとりあえず訊いてみる。

「なぁ、意味とかなんとか何の話してんだ?」
「又吉が言ってたんだけど」前置いて魔王は言う「魔王は世界の仕組みの一つだって言っていたのは覚えているか」
「ああ、うん、まぁ」

 うろ覚えだが。

「それで、だから魔王は世界がバランスを取るために必要だから生じるものだから、滅ぼされたりしたら世界がなんか大変なことになるって」
「……本末転倒じゃねそれ」

 眼前の危険因子を排除して大局的に危険を招いてしまっては元も子もないではないか。魔王が戸惑うのも無理は無い。というか誰だって反応に困る。
 いや……

「そもそも、ストーカーに世界とかそんなん関係無ぇもんな。物事を大きく捉えすぎてんだよ俺らが。うん」
「? どいうことだ?」
「ストーカー?」
「うん、俺が思うにだな」

 ひそ、と引き寄せた二人の耳元へ口を近づけ朋幸は言う。

「あいつはマリアのストーカーで、邪魔な俺達を、あいつ曰く排除したがっているんだ。ようはそれだけの話しなんだよ。あいつが魔女でこっちに魔王がいるからなんか壮大な話のような気がするけど、ようはそれだけなんだって」
「おお、なるほど」
「……そ、そうでショうか?」
「うん、絶対そうだ」
「何の話をしている?」

 痺れを切らしたらしい男が棘のある声を割入らせる。そちらを三人ちらりと見て、けれどまた額を突き合わせる。

「で、どうするんだ朋幸」
「とりあえずアイツ捕まえよう」
「つ、捕まえるんデスか?」
「うん。ストーカーだからな。捕まえて警察だ」

 勇み拳を握る朋幸。強く頷く魔王。戸惑うエドガー。
 男が杖を振り上げる。

「auflodern」

 唐突に、三人の足元から舐めるように炎が燃え上がった。が、魔王が地を踏みつけると大量の水をかけられたように鎮火する。

「大丈夫か!?」
「お、おう、びびった」
「かかって来い。どうせ貴様以外は相手にならん」

 魔王。と、呼びつつ切れ長の目を更に細める男へ、魔王は一歩、歩み出た。

「いいだろう。愚かな人間め。そのご、ご、えーっと、ごう、ごう……?」

 どうやら決め台詞を忘れたらしい。

「と、とにかく相手になってやる。かかって来い」
「ふん。zufrieren」

 高く澄んだ音が鳴る。何度も何度も、続けざまに。その音が響く度に、魔王の身体が足元から氷に覆われていく。それを他人事のように見下ろして、魔王は鬱陶しげに眉根を寄せた。

「大口を叩いてこの程度か」
「紺碧の空に我、呼び掛けん」

 朗と声が響いた。
 この表現は決して比喩では無い。叩き鳴らされる教会の鐘の如く、男の声が響き渡る。その響き方は魔王が話す声に似ていた。
 風が吹く。男を中心に渦巻いてその服を、髪を、はためかせる。

「散りし光、収束せよ。漂流せし力、集結せよ。我は導。如月翠の名において、汝らに意味と形を授けん。我が身を破壊の道具とし、我は汝らを行使する」

 蒼が降る。
 男のいる場所にだけ蒼が降る。その姿が霞む程濃く、柱のようになって空が降り注ぐ。朋幸も、エドガーも、魔王すらも、それをぽかんと見つめていた。
 驚きのあまりに声も出ない。

「我が内に宿れ光。我が身を喰らえ力。収束し集結し、敵を屠る凶と為れ。我が身は砲筒、我が身は銃身。我は対象を――破壊する」

 氷の砕ける音がした。
 飛び散る氷片が地に落ちるより早く魔王は鋭く命令する。

「霧散しろ!」

 散る。
 光が、蒼が、場に満ちていたモノが、ただの一喝で消え失せた。降り積もった埃が一息で吹き飛ばされるように、蝋燭の火が吹き消されるように、唐突に。驚愕のあまり男は一瞬と云わず硬直したが、

「ならばコレはどうだ」

 言いつつ振るった杖が剣に変わる。轟と空を切り裂いて、男は身を低くすると無骨なグラディウスを構えて跳んだ。迫る。迫る。応じ魔王が手を翳して、

「はい、そこまで」

 唐突に、
 両者の間へ壁が出現した。

「っな」
「邪魔をするな、桜花!」

 鋭い叱責に、応じたのはブランコの軋む音だった。
 あれ、と朋幸が思わず呟く。
 キィ、キィ、ゆったりと場違いに揺れるブランコの上には、一体全体いつからそこにいたものか、少女が一人、座っていた。

 否、少女と呼ぶのは失礼か。小柄で童顔だから幼い印象を受けるが、それでも十七、八歳くらいには見える。ともすれば二十歳を数えているかもしれない。服装は造花飾りの幾つか付いたハンチングを目深に被り、ピンクとホワイトの細い横縞柄をしたVネックのシャツの上から、ワインレッドと茶色を主調とした厚手のポンチョを被って、下はレースを重ねた純白のスカートを短く履いていて、黒いタイツとの対比が眩しい。靴は浅い茶色のショートブーツ。

 全体をシックに纏めつつ、華やかな印象のある女性だった。幼さを残す面立ちを引き立てている、自身の外見的価値をよく理解していて、その魅力を十二分に引き出す術を知っているらしいことが伺える服装だ。
 セミロングの、きっと一度も染めたことなんて無いのだろう黒髪が、ブランコごと前後に揺れる度にさらさらと靡いている。その揺れを両足でブレーキをかけて止め、桜花と呼ばれた女はその名と同色の薄ピンク色で控えめに塗られた唇をすぼめて、そっと、溜め息をこぼした。

 カシャンと些か乱暴に立ち上がって、零れ落ちそうなほど大きな両目をぱちりと開いて四人を視界に収めてから、桜花は――頭を下げた。
 背筋をぴんと伸ばして、前に組んだ両手を肘から引いて、すぅっと四十五度。まるでどころかまるきりお見本のような、それは美しいお辞儀だった。思わずその場にいる者達がぽかんと毒気を抜かれる程度には、場違いに完璧なお辞儀だったと言える。
 桜花は頭を上げると、はにかむような、見る者へ私は今困っていますと伝えるような、そういう懐っこい顔で微笑んだ。

「私共の身内が粗相をしたようで、大変失礼を致しました。不行き届きをお詫び申し上げます」

 年不相応な態度と唐突な謝罪の言葉に、はぁ、と間抜けな声しかでない。……否、桜花の身内だという男だけは、壁越しになるので朋幸らからは窺い知れないが、どうやら眦を吊り上げたようだった。

「何故謝罪などする必要がある。俺は敵を排除しようとしたまでだぞ」
「翠は黙っていなさい」

 静かになった。どうやら本当に黙ったらしい。そう素直な性質には見えなかったが……これも魔法だろうか。
 このように、と、桜花は溜め息混じりに続ける。

「どうやら認識に食い違いがあったようで、皆様にはご迷惑をお掛けしてしまって。彼には私から後程、十分に言い含めておきますので、どうかこの場は矛を収めてはいただけませんでしょうか」
「断る」

 答えたのは魔王だった。

「おいコラ、断るって、向こうも謝ってんのに」
「謝られても、朋幸が殺されかけた事実に変わりは無い」

 エドガーの事はいいらしい。

「朋幸を殺そうとした奴を、許す気も逃がすつもりも、無い」
「困りましたね」

 言葉の通りの表情で微苦笑を浮かべて、けれどそれだけだ。女にはまるで狼狽える様子がない。まるであらかじめそう言われるだろう事を予期していたように、変わらぬ丁寧な物腰で言葉を紡ぐ。

「お怒りはご尤もです。ですが、どうか矛をお収めください。私共にあなたを排斥する機会を、どうか与えないでください。魔王。魔力を統べる大いなる力の主よ」

 どうか恩赦をと、桜花は言って頭を下げる。

「ダメだ」

 だがそれすらも魔王はにべもなく切り捨てた。

「朋幸を殺そうとした奴を、許す気も、逃がすつもりも、無い」

 繰り返された言葉はその意志の堅さを示すようで。
 桜花は――深く、溜め息を吐いたようだった。

「では、仕方がありませんね。礼を欠くような事は出来る限りしたく無かったのですが」

 仕方がありませんねと、もう一度桜花は呟いて、帽子を取った。
 息を飲む音は朋幸のものか、エドガーか、魔王か、あるいはその全員か。
 桜花の露出した額。そこには、眼が、あった。縦に割けた金の瞳が、ぎょろりと魔王を見る。

「跪いて下さい」

 そんなただの一声で、がくんっ、と魔王が膝から崩れ落ちた。

「――ッ!??」
「魔王!?」

 変化に乏しめの顔へ驚愕を張り付けて、魔王は即座に立ち上がろうと足宛いたようだった。けれど、僅かに肩を揺することしか出来ない。

「全員、どうかその場を動かないでいて下さい」
「――!!」

 動けない。魔王へ駆け寄ろうとした朋幸も、立ち竦んでいたエドガーも、腰から下が凍り付いたように動かなくなって狼狽した。両手で叩いても引っ張っても、両の足ともびくともしない。まるで言葉の縄で地面へと縛りつけられているようだ。

「おい! おいお前桜花! 桜花っつったよな何だよこれ何しやがる!」
「少しの間だけ不自由をおかけしています」

 心苦しく思っているという表情で、告げつつ桜花は柵を迂回し男の元へ歩み寄る。手を軽く振るだけで出現していた壁を消し去って、朋幸らと同じように動けないでいるらしい男の腕を掴んだ。

「それでは、私共はこれで失礼させていただきます。この度は大変ご迷惑をおかけ致しましたこと、重ねて謝罪申し上げますね。本当に、申し訳御座いませんでした」

 言いつつ深々と頭を下げてから、また何れ近い内に改めてご挨拶へ参りますと、告げて桜花は中空へと何事かを命じたようだった。
 風が吹く。吹き荒れて、砂埃がその姿を覆う。

「皆様、御機嫌よう」

 声だけが不思議とはっきり聞こえて、
 風が止んだときにはもう、二人の姿は影も形も見当たらず、取り残された三人はただただ呆然と立ち尽くすことしか出来なかった。


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Buck / Top / Next