16日目 8月8日 晴 | |||
探索中、神社を見つけた。 こんなことになる前は機能していたのだろう、そこそこ広い神社だ。 見れば売り場にお守りが残っていた。いくつか持ちだされた形跡はあったが。 神社の案内なのだろう立て札を読んだところ、ギャンブル関係の神が祭ってあるらしい。災難除け……病院の警備をしているときに聞いた覚えがあるな。かなりご利益のある神社だとか……。 手持ちに空きは無いが、知り合いに渡すのでもいいだろう。 病院警備のついでに周囲の様子を探っていたら知った顔を見つけた。 ……確か、長谷川嵐。武器商の跡取りだ。 目があったのでお守りを押し付けてきた。 …………ほぼ初対面で急に話しかけた上に物を、しかもお守りなんてよくわからん物を押し付けてきて奇妙に思われたんじゃないだろうか。思うだろうな。いや、記憶している彼の人格から推察するに気に留めていないかもしれないが。 ああくそ、考えても仕方が無いだろうに。面倒な。
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15日目 8月7日 晴 | |||
探索を行ったが特筆すべき事は無かった。 ……そういえば食事をしているとき、物音がしたから様子を見に行ったら戻ると食事がなくなっていた。 人間か、ゾンビか、野生動物だったのか……まぁ、考えても仕方が無いか。 自分が襲われなかっただけよかったと思おう。
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14日目 8月6日 晴 | |||
探索に出たらまた秋風がゾンビの群れに襲われていた。 …………何度目だ。危険な場所へ入り込み過ぎなんじゃないのか。もう少し注意した方がいいんじゃないのか。取り返しのつかないような怪我を負ったらどうするんだ。まったく……、 その後は探索を早々に切り上げて休息をとった。昨日治療を受けたとはいえ、我ながらボロボロだからな……。 少しためらったが、数日分の食糧に手をつけた。ここ数日でずいぶん食糧が増えたから、な。まぁいいだろう。 病院警備に参加した。少し負傷したが、大したことはない。
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13日目 8月5日 晴 | |||
以前、ゲームセンターで秋風を助けた時に会った女性と食料庫の前で再会した。フェルリナード、という名だったか。あの時は長かった髪がざんばらになっていた。……まぁ、こんな世界だからな。 食料庫は崩れかかっているので危険だが、わずかずつならばなんとか持ち出せそうだ。実際それで先程秋風と宗甚と協力して食糧を得たらしい。 まだなんとか入り込めそうだったので俺も便乗させてもらった。 その後、見覚えのある男がゾンビに襲われているのに遭遇した。 ……以前、探索中に老人から食糧を奪おうとしていたからノした男だった。 クソ……面倒な。襲われるなら襲われるで俺のいないところで襲われろ。 泣きながら食糧を渡されたので受け取って早々に立ち去った。 後は病院の警備に参加した。 以前、銃の改造をしてくれた女性にすすめられて治療を受けた。 それにしても……何かあったのか? 襲撃者陣が随分と血気盛んになっている。 警備側も多かったからなんとかなったが……しばらくは警備についていた方がよさそうだな。 ……また警備中に見知った顔を襲撃者側で見かけたが、見なかったことにする。
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12日目 8月4日 晴 | |||
夜、休息のために入った建物で地図を見つけた。暗号文を解読してみると食糧の隠し場所を示したものらしい。しかも書いてまだそう経っていないようだ。……先ほど始末したゾンビのものか? こんな世界で夜間に移動する危険にためらったが、今夜は幸いな事に満月で明るい。行ってみるか。 戻ってきた。幸いなことに食糧はまだ誰にも発見されていなかったようで、随分な量を入手できた。 今夜はもう休むことにする。 日が登ってから探索を開始。 ……ガレキの山を相手に四苦八苦している知人を見つけた。 海夜彦という、蛇のような金の瞳が印象的な男だ。優しすぎるほどの性格で、あまり他人を疑わない。コイツまでこの世界に来ていたのかと顔がひきつった。 何をしているのかと声をかけてみれば、ガレキの向こうに食糧が。……放っておくのも忍びない。手持ちの火炎瓶を使ってガレキを撤去した。お礼にと食糧を渡されかけたが、どう見てもあちらの方が手持ちが心もとなかったので断った。ら、思いの外しつこく渡そうとしてきたので逃げた。アイツは普段は気が弱いように見えるのに変なところで頑固だ。 日中、探索を続けていたら知り合いに声をかけられた。杉野宮紳という白衣を着た男だ。人格に関しては……記述を控える。 どうやら飛行場で救難信号弾を見つけたが手持ちに空きがないらしい。「お前の方が上手く使えるんじゃないか」と手渡された。他人の力に頼るというのはためらうが、まぁ、言っても仕方が無いか。ありがたく貰っておいた。 探索では結局何も見つからなかったので、戻って病院の警備に参加した。 ……襲撃者が出たと言われて向かった先で見知った顔を見かけた気がしたが、気のせいだったと思いたい。
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11日目 8月3日 晴 | |||
今日は商店街を探索した。 ……ゲームセンターの中で秋風と宗甚が大量のゾンビを相手に戦闘をしていた。 あんなところで何をやっていたんだ、まったく。 助力に割入ったが数が多い。もう一人助勢に来てくれた女性がいたが、どうにも武器に慣れていない様子だった。 なんとか二人を外へ連れ出せないかと考えあぐねていたらいきなり飛び込んでいった男が鮮やかな手つきでトラップを仕掛けてゾンビの足止めをした。 ……秋風の知り合いらしいが、軍人だろうか? とりあえず、誰にも大した怪我がなくてよかった。 別れた後、周囲を探索していたらまた宗甚に会った。どうやら治療薬が必要らしい。噛まれでもしたのかと焦ったが、そういうわけでは無いらしい。よかった。 彼には何かと世話になっているし、あの治療薬だって元々は彼に貰った物なのだから、彼の役に立つのならば本望といったところだろう。対価と言って食糧を渡されかけたが断った。律儀な人だ。 その後、がらんとしたスーパーマーケットで油と手頃な瓶を見つけた。 ……響に聞いた火炎瓶の作り方を実践する日が来るとはな。 元の世界に戻れたら、礼でもするか。 探索を続けていると、水音と何やら楽しげな話し声が聞こえてきたので興味をひかれて足を向けてみれば、澄んだ川べりで休息している人達を見つけた。こんな世界にこんな綺麗な川が残っているとはな。驚いた。折角なのでそこで俺も少し休息を取らせてもらった。 探索の後は病院の警備に参加した。
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10日目 8月2日 曇のち晴 | |||
昨夜は早めに休息をとったからか、日の出とほぼ同時に目が覚めた。 早起きは三文の徳とはよく言ったものだ。探索を開始してほどなくコンビニにわずかながら食糧が残っているのを発見した。 その後も周囲を探索した。 ……昨日の暴徒どもが何人か感染していた。 クソが……半狂乱になって襲いかかってきたのを始末するのに手こずった。まぁ、連中の持っていた食糧を得られたのは大きいが。 この世界に来てから今日で10日目。ずいぶんと怪我が増えた。アイツがいなければ、自分はこんなにも無力なのかと ……いや、やめておこう。言ったってどうしようもない事だ。 そういえば、良いニュースもあった。廃病院に十分な物資と人材が蓄えられたらしく、本格的に病院として活動を初める事になったそうだ。 警備の礼に、優先的に治療を施すと言ってくれた。ありがたい。 あの廃病院は放棄して、使えそうな病院を探しに移動を開始するそうだ。途中まででも護衛を引き受けることにする。……折角の門出に襲撃者どもの邪魔を受けるのは、しゃくだからな。 追記 休息の為に上がった屋根の上に先客がいた。少女を連れた俺と同年代くらいの男だった。 場所を移ろうかとも思ったが、気にした風も無かったので腰を下ろした。 何を会話したわけでもなかったが、久しぶりに穏やかな時間を過ごしたように思う。
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9日目 8月1日 曇時々雨 | |||
昨日見つけたヘリポートを中心に周囲の探索を行っていたら、武装した集団に襲われた。 食糧目的だったようだが、此方が武器を持っていると見るとそれまで奪おうとして来やがった。まったく、面倒な。 逃げ回りながらなんとか全員を撃退したが、こんな世界では警察へ引き渡すことも出来ないし縛っておくにしてもゾンビ化されては面倒だし、そもそも縛る縄を探すのが面倒だし、まったく面倒くさい。 伸びている連中も死体も放置して来たが……後々にまた襲われない事を祈る。 疲れた。途中で雨まで降りだすし、ツイていない。今日はもう寝る。
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8日目 7月31日 晴 | |||
今日は病院警備を休み、踏み入ったことのない区画まで探索の足を伸ばした。 頑強なビルが建ち並ぶ、元はビジネス街であっただろう場所だ。 ひときわ高く、統一感を持って何本も建ち並ぶビルが気にかかり中へ踏み入った。 ビルに四方を囲まれた広い、中庭、だろうか。庭と言ってもすっかり舗装されている。だが庭と呼ぶに差し支えないほどの広さだ。 その中央に、ヘリポートがあった。 ……こんな状況下でヘリなど来るものか。 しかし、この世界を脱出した者が多くいるらしい事も事実だ。先だっても雪という、以前倉庫前で会った少女が脱出できたらしいと秋風が言っていた。 とりあえず、この場所は次のページに記載しておく。……ついでに、周辺の地図でも書いておくか。
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7日目 7月30日 晴 | |||
今日は探索中、二度もゾンビの集団に襲われている奴に遭遇した。面倒な。 どちらも、他にも助太刀に入る奇特な奴らがいたからそう苦戦はしなかったが、なんなんだ。あのあたりにはゾンビの集落でもあるのか。そこから近い位置にあった建物を探索していたら俺までゾンビの群れに襲われたぞ。まったく面倒な。 幸い棚の上に逃れられたから、かすり傷程度ですんだが……まったく。 そういえば秋風も助太刀に加わっていたな。怪我などしていなければいいが。……アイツなら心配するまでもないだろうが。 これからまた病院の警備に参加する。
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6日目 7月29日 晴 | |||
今日は探索を休み、院内で運搬などの手伝いや情報収集をして過ごした。こんな荒廃した世界でまだこれほどの余剰物資があるのかと改めて驚く。 だが、ある場所にはあるが、無い場所にはまったく無いのは何処の世界も変わらないらしい。襲撃は日に日に勢いと数を増しているようで、院長も襲撃者ともみ合いになり怪我を負ったようだ。大したことは無い様子だが……先導者というものは、どんな場所でも希少だ。特に善行を成そうとする者は少ない。もう少し自分を大事にしてもらいたいところだ。 日が沈んでからは警備に参加した。
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5日目 7月28日 くもり時々晴 | |||
病院警備の休憩中に探索へ出た。 途中、看護婦を連れた男に出会った。どんな世界から来たのか、耳が獣のようだった。ここへは随分と様々な世界の連中が落とされているようだ。 何があったのか、少ない食糧を囲んでため息をついていた様子があまりにも不憫だったので、食糧を押し付けてきた。……俺はまだ余裕があるし、一人だからな。それに餓死されても寝覚めが悪い。 そういえば、病院の事を教えてやるべきだっただろうか。まぁ、あれだけ人が集まっていれば耳に入るだろう。 その後は最悪だった。 探索中、ゾンビに襲われた。まぁそれはいい。良くないがまだ良い。しかし行く先々逃げた先々でゾンビに襲われるというのはどういう事だ。奴ら結託でもしているのか。ゾンビ如きが生意気な。 大した手傷は負わなかったが、さすがに疲れた。病院の警備も今日は出来そうにない。適当な場所で休むことにする。
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4日目 7月26日 くもり | |||
病院の周囲を警備中、なんとなく動物特に猫に好かれそうな雰囲気の女性と技術者風の男が会話しているところにでくわした。 男は武器の強化が出来るそうだが、女性は武器を所持していないとの事。折角の機会なのでショットガンを強化してもらった。 何度か襲撃があった。が、結構な人数が警備にあたっていることもあり特筆すべき問題は今のところ無い。 警備を交代し、休憩時間を利用して周囲の探索を行っていたら、やたらと素早いゾンビに襲われた。元アスリートか何かだったのだろうか。かなり手こずったが、なんとか倒した。警備に来た連中の話題にものぼっていたが、どうやら様々な種類のゾンビがいるらしいな。まったく面倒な。 警備中、宗甚とまた会った。餞別だと治療薬を投げ渡された。ショットガンといい、どうしてこう貴重な物資を他人に譲渡出来るのか……よくわからない人だ。 ……元の世界へ戻る前に、受けた恩を返さないとな。 今日もこれから病院警備を請け負うことにした。安全な寝床を確保できるというだけでも請け負うに十分な理由だろう。情報交換も出来るしな。 では、見回りに行ってくる。
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3日目 7月25日 晴れ | |||
路地裏を探索中に、軍服を着た奇妙な男に襲われた。鍵がどうのとわめいていたが……なんだったんだ。 その後、何やら廃病院を立て直そうとしている連中がいると小耳にはさんだので、そこへ看護婦を連れていくことにした。当人もずいぶんと乗り気だったので。 途中、昨日出会った剣道着姿の男と再会した。看護婦に元々同行を求められていた男だ。彼女を病院へ連れていく事を話すと、道中警護を申し出てくれた。 病院へ辿り着くと何やら気忙しい。話を聞けば、人も物資もずいぶん集まったが、今度はそれを狙っている連中がいるのだとか。そりゃあまぁそういう輩も出てくるだろう。今まで憂慮しなかっただろうのか。ともあれ院では現在警備員を募っていると事、これも何かの縁と思う事にして引き受けた。 周囲の見回り中、先ほど別れた男がショットガンを届けてくれた。院までの道中で武器が無い不安を呟いたが、それを気にかけてくれていたらしい。ありがたい。が……困ったことに、銃器類の扱い方なんぞ俺は知らない。彼、宗甚も銃は専門外らしい。というか嫌いだとはっきり言っていた。みれば背中に提げているライフルも銃身がずいぶんと……。俺もいざとなれば鈍器として使うか。 などと考えていれば秋風を見つけたので、扱い方を教わった。 ……とりあえず、銃口を覗いてはいけない事、トリガーには無闇に指をかけない事、安全装置の外し方、などは覚えた。これでなんとかなるだろう。しかし扱いなれていない事に違いはないから、無いものと思って立ち回った方が良いのだろうな。 今日もいろいろとあった。 ……明日の夜まで病院の警備にあたる。この後も、何事か起きるかもな。 無事に終わることを祈る。
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2日目 7月24日 晴 | |||
今日は急に色々な事があって疲れた。 昨日は地上で何も見つけられなかったので、今日は開いていたマンホールから下水へ降りてみた。地下に避難している人間がいないとも限らないと思ったのだが……失敗だったな。 自分でも信じられない話だが、水路にサメが出た。歩いていたら襲われた。なんとか返り討ちにしたが……本当に、驚いた。 しかも、どうやらアレは既に死んでいたらしい。明らかに肉が腐っていた。……黒魔術の類か? 勘弁してくれ。 地上に出た後には、何やら堅牢な扉の前で立ち往生している人間に出会った。勿論生きている人間だ。 どうやら、建物は食料庫だが扉が固く開かないらしい。話している間にも人が二人集まってきた。……うち一人を見て驚いた。同時に現状に少々納得もした。 秋風彩香。見た目はただの女子高生だが、戦闘に関してはプロフェッショナルと言っていいだろう。……万が一、この手記を第三者が見つけるような事があり、誰かに助けを求めたいのなら、そして悪意が無いのならば、彼女を探してみるのもいいだろう。彼女ならばまぁ危害を加えられるという事は無いだろう。助けてくれるという保証もしかねるが、情報交換くらいはできるんじゃないか。 彼女は赤い瞳に長い黒髪が特徴だ。……もし困っているところを見かけたら、助力してやってほしい。 話がそれたな。 ともあれ秋風と、雪という女性、それに倉庫の前にいた りみ の4人で食料庫の扉をこじ開けた。堅牢だっただけに食料は随分残されていたので、ありがたく俺ももらって行くことにした。 全員で行動するという選択肢もあったが、誰も提案しなかったところを見るにそれぞれ実力者ではあるのだろう。話を聞けば、全員が違う世界から迷い込んだと言う。ここは、そういう世界なのだろう。 俺もまぁ場数は踏んでいる。全員が腕に覚えがあるなら固まって行動して情報を得られる機会を減らす事もないだろう。 その後、剣道着を着た古風な男と看護婦に出会った。 どうやら、看護婦に同行を求められて困窮していたらしい。まさか置き去りにするわけにもいかないので俺が引き受けることになった。……対人警護ならば秋風の方が最適だっただろうに。次に会ったら打診してみるか。
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1日目 7月23日 晴 | |||
気がついたら奇妙な場所に……否、奇妙な世界に迷い込んでいた。 常にそばから離れられないはずのルシフェルの気配が無いし、呼び出すことも、奴の力を使うこともできないから、まぁ、元いた世界ではないのだろう。 近くに落ちていた鞄には結構な量の食料と水が入っていたから、飢え死にの心配だけは今のところ無さそうだが……どこなんだ、ここは。 元はさぞかし近代的な都心部だっただろうに、荒廃に荒廃を重ね見る影もない。どころか人っ子一人いやしない。しばらく探索してみたが、ネズミの一匹すらもみかけなかった。この世界には生物がいないのだろうか。街並みはただ風化しただけにしては破壊の痕が濃い。多量の血痕もあちこちで見かけたし……どうにも、嫌な予感がする。 なんにせよ、この世界から早いところ抜け出さなければならないだろう。脱出が叶うまで、その日一日の出来事をご丁寧なことに食料にまぎれて鞄に入っていた白紙のノートに記載していく事にする。 ……このノートが埋まる前に、脱出したいところだ。 とりあえず比較的きれいな状態を保っているホテルを見つけたから、今日は一日ここで過ごすことにした。 本格的な探索は明日からにする。何か有益な情報が手に入ることを、心から願う。
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