2匹の猫は猫じゃらしの森にある細い道を歩きながら、
 他愛も無い言葉を交わし
 笑いあった。


「ネロの住んでいる村は、どんなところだい?」


 ふいに、レオが数歩先を楽しそうに歩くネロに聞いた。


「うんとねぇ、川があってぇ、まぁるいお家がいっぱいあってぇ、それから、村長さまがいるよ!」


 ぱっと顔を輝かせたネロの言葉に、レオの耳がピクリと動いた。


「村長さま?」


 村に限らず、群れがあればそれをまとめる者がいるのは必然だ。特に不思議な事でもないだろう。
 そうであるにもかかわらず、レオの瞳が妖しく揺らめいた。
 けれどそれは帽子の鍔の下に隠されていて、ネロは気づかず、無邪気にうなずいた。


「うんっ! 村長さまはね、守護者さまと一緒にせんじゅーみんと戦って、この村をおつくりになられたんだよ!」
「先住民と?」
「うんっ!」


 おそらく村の大人たちから聞かされたのだろう、ネロは嬉しそうにうなずいた。
 そんなネロに、レオは微笑んでいった。


「聞かせてくれないかい? その話を、」
「うんっ!いいよ!」


 ひときわ大きくうなずいて、ネロは一度、目をつぶった。
 古の物語を、その瞼の裏に思い描くように―――――



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